書類を電子化すると、必ず出てくる疑問があります。「原本を捨てても大丈夫なのか」「スキャンしたデータは原本として通用するのか」。
この判断に関わる考え方が「原本性」です。ただし、これは技術というより制度と運用の問題であり、書類の種類によって扱いが変わります。
本稿では、原本性とは何か、なぜ問題になるのか、電子化の際に何を確認すべきかを整理します。
原本性とは何か
原本性は、その文書が「本物であり、改変されていない」ことを示す性質です。
3つの要素で構成される
一般に原本性は、次の要素で語られます。
- 真正性:作成の責任の所在が明確で、改ざん・消去・取り違え(混同)が防止されていること
- 見読性:必要なときに肉眼で読める状態で表示・出力できること
- 保存性:定められた期間、真正性と見読性を保ったまま復元できる状態で保存されていること
紙の原本は、印影や署名、紙質そのものがこれらを担保してきました。
電子データでは別の担保が必要になる
電子データは容易に複製・編集できるため、紙と同じ方法では担保できません。そこでタイムスタンプ、電子署名、変更履歴の記録といった仕組みが使われます。
つまり電子化するとき、原本性を保ちたいなら「スキャンするだけ」では足りない場合があります。
なぜ原本性が問題になるのか
すべての書類で原本性が必要なわけではありません。問題になるのは限られた場面です。
法令で保存方法が定められている場合
税務関係の帳簿・書類は、電子帳簿保存法によって保存方法の要件が定められています。要件を満たさない保存では、法令上の保存義務を果たしたことになりません。
要件には、解像度や検索性、改ざん防止措置などが含まれます。詳細は制度改正で変わるため、最新の要件確認が必要です。
>>電帳法スキャナ保存の要件はこちらで解説しています。
紛争時に証拠として使う可能性がある場合
契約書は、後にトラブルが生じたとき証拠になります。このとき、コピーやスキャンデータより紙の原本のほうが証明力が高いと考えられています。
スキャンデータが証拠として一切使えないわけではありませんが、原本があるほうが確実です。
取引先や監査で原本提示を求められる場合
社内では電子データで運用していても、外部から原本の提示を求められることがあります。この可能性がある書類は、原本を残す判断が安全です。
原本を残すべき書類の考え方
判断の目安を整理します。
原本を残すことが望ましい書類
契約書、権利証書、登記関係書類、公的な証明書などは、原本を保管する運用が一般的です。
これらは代替が難しく、再発行にも手間がかかります。電子化はあくまで参照用と位置づけ、原本は保管しておく形が無難です。
電子化後に処分できる書類
社内資料、参考文献、過去の報告書、日常的な事務書類などは、原本性が問われにくい領域です。
保存年限を過ぎた書類も、法定要件を確認したうえで処分できます。
判断に迷う場合は専門家に確認する
税務関係の書類や、業界特有の規制がある書類は、税理士・弁護士や所管する官庁に確認するのが確実です。
本稿は一般的な考え方の整理であり、個別の判断はそれぞれの制度と状況に依存します。
>>書類を捨てる前の判断基準はこちらで解説しています。
電子化と原本保管は両立できる
「電子化する=原本を捨てる」ではありません。両立させる運用が実務的です。
データは日常利用、原本は保管
普段の業務ではスキャンデータを検索・参照し、原本は倉庫や書庫に保管しておく。この形なら、利便性と原本性の両方が確保できます。
原本を持ち出す回数が減るため、紛失や汚損のリスクも下がります。
裁断しない電子化という選択
原本を残す前提であれば、電子化の際に裁断しない方法を選ぶ必要があります。綴じたまま読み取る非破壊スキャンが該当します。
>>非破壊スキャンとは何かはこちらで解説しています。
保管コストとの兼ね合いで考える
原本を残せば保管スペースと費用がかかります。すべてを残すのではなく、原本性が必要な書類だけを選別して残すのが現実的です。
電子化を機に、この選別を行う企業は少なくありません。
電子化を依頼するときの確認事項
原本性を意識する場合、依頼時に伝えておきたい点があります。
原本を返却するか処分するか
作業後に原本を返却してほしいのか、処分してよいのかを明確に伝えます。処分してから「必要だった」と気づいても取り返せません。
裁断の可否
原本を残す場合は、裁断しない方法を指定する必要があります。裁断可否は必ず事前に伝えてください。
解像度の要件
法令対応が目的の場合、解像度などの要件が定められていることがあります。要件を確認したうえで設定を指定すると確実です。
タイムスタンプ等が必要か
電帳法対応などでタイムスタンプが必要な場合、スキャン代行の作業範囲外となることがあります。運用側でどう担保するかを事前に整理しておくとよいでしょう。
まとめ
原本性は、文書が本物で改変されていないことを示す性質です。真正性・完全性・可視性の3要素で語られます。
すべての書類に必要なわけではなく、問題になるのは法令で保存方法が定められている場合、紛争時の証拠になる場合、外部から原本提示を求められる場合です。
契約書や権利証書は原本を残す運用が一般的で、社内資料や参考文献は電子化後の処分が可能な領域です。判断に迷う書類は、税理士・弁護士や所管官庁に確認するのが確実です。
なお「電子化する=原本を捨てる」ではありません。データを日常利用し、原本は保管する形なら両立できます。この場合、裁断しない電子化を選ぶ必要があります。
スキャンプロでは、裁断しない非破壊スキャン、原本の返却、機密文書としての溶解処理まで対応しています。方針が決まっていない段階でもご相談いただけます。
>>電子契約と紙原本の使い分けはこちらで解説しています。